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これらのプログラムは、もともと秀丸エディタとFind Differences(現在の「ちゃうちゃう!」の前身)を使って行っていた作業を自動化するために作成したものです。

CT_Matchシリーズが誕生したのは2003年頃であるのに対し、初代Find Differencesの開発は1998年夏です。CT_Matchシリーズが生まれるまで約5年間は、これを使うことなく完全/部分一致の検索や比較を行っていました。

そんなある日、同一出願人による関連ケースとして同じような内容の翻訳案件を5件同時に受注しました。それまでは、内容に類似性のある案件を複数受注した場合、全部を1つのファイルにまとめて翻訳をしていました。これは、CT_Translateなどで自動入力を行う回数を極力減らすためです。

ただ、このときは1件あたりのボリュームが大きく、全部を1つにまとめてしまうと重くて仕事になりません。そこで、まずは最初の1件を翻訳し、残りは秀丸+FDJPで対処することにしたのです。

いつものように、秀丸を使って似ている部分を探し出し、該当する原文をFDJPで比較し、すでにある対応の翻訳文をコピー(必要に応じて一部修正)して、必要な部分にペーストする作業が始まります。

この場合、完全/部分一致が続いていれば複数の段落をまとめて比較していきますが、ときには内容が全く同じなのに出てくる順序が違う段落もあります。

これをFDJPで一気に比較すると、順序違いの段落が追加・削除扱いになります。結局、追加や削除の部分だけをもう一度比較し、完全一致していることを確認した上で訳文をコピーしなければなりません。

このときは、1日あたり平均15,000ワードを処理しないと間に合わない納期でした。いくらFDJPがあるとはいっても、一段落ごとにFDJPを使っていく作業は、かなりの負担になります。

そこで、この負担を減らすために登場したのがCT_Matchです。具体的に言うと、CT_Matchには以下のプロセスを手伝ってもらっています。

(1) 似ている文の検索(秀丸)
(2) 該当する文の原文のコピー(秀丸)
(3) コピーした内容をFDJPにペースト(FDJP)
(4) 翻訳対象原文から、比較したい文の原文をコピー(Wordまたは秀丸)
(5) コピーした内容をFDJPにペースト(FDJP)
(6) 原文同士の比較(FDJP)
(7) 比較対象とした原文に対応する、すでにある翻訳文をコピー(Wordまたは秀丸)
(8) コピーした翻訳文を、翻訳対象原文の該当箇所にペースト(Word)

要するに、完全/部分一致文が相当な率で含まれることが分かっているときに、上記の作業を助けてもらうことがCT_Matchの目的です。CT_Matchではベースになる翻訳資産の作成には細心の注意を払う必要がありますから、普段はCT_Matchよりも秀丸とFDJPの組み合わせを使うほうが、効率的で速いことも多々あります。

実は、この関連5件の受注には裏話があります。
クライアントさんの方では、翻訳者の負担を極力減らすためにという配慮から、完全一致部分に翻訳不要として×印を付けてきていました。

先方では親ファイルをひとつ決め、それをベースに他の件をFDJPで一気に比較して翻訳不要箇所を抽出していたのです。翻訳不要箇所については、納品後に社内のコーディネータが親ファイルの訳文から該当部分をコピーして挿入する段取りになっていたようです。もともとが普通にやって訳せる量ではありませんので、この配慮はもっともです。

でも、CT_Translateなどのツールを駆使していた私にとって、翻訳不要箇所だけ原文のまま残すのは、かえって厄介でした。かといって、翻訳不要箇所をいちいちデータから削るのも100%無駄な作業になります。それより、全文に訳を入れておく方がよほど楽でした。ましてやCT_Matchが生まれた後はなおさらです。

そこで、翻訳不要箇所にも訳文を入れてもよいかと訊ねました。訳文の挿入は、もともとクライアント側で行う予定になっていた作業ですので、ノーと言われるはずがありません。

最初から過剰負荷の案件なのに、さらに自分の作業を増やすような要望が翻訳者の側から出たことで、クライアントは驚きました。このようなことがあると、翻訳者への謎と信頼感は高まります。おまけに、翻訳不要箇所を除いても普通なら何日もかかるような翻訳が、1日1件のペースで納品されてきたあかつきには、クライアントがいかに驚いたかは想像に難くないでしょう。

この一連のケースでは、(さすがに無理だと思ったのか、こちらに発注されていなかっただけで)実はもっとたくさんの関連案件がありました。

そして、最初は5件での発注だったのが、途中から何件も追加の依頼がきています。そう、「どうしてなのかは謎だけど、こんなに高速・確実に処理できるのであれば、もう少し頼んでも大丈夫かも」ということになったわけですね。

CT_Matchシリーズは、こうした「いざというとき」に強いツールです。
もちろん、似たような内容の案件ばかりを扱っている人であれば、毎回使うようにしても構わないのですが、基本的には万が一に備えるためのツールだと考えてください。

なお、CT_Matchを使わずに秀丸エディタとFDJPを利用した運用事例については、辞書パックの資料『エディタとテキスト比較による翻訳資産活用の運用事例』で解説しています。