心の持ち方がもたらす影響

パソコンとの二人三脚をするにあたり、原文の電子データは不可欠です。このデータについては発注元からもらえるのが一番ですが、必ずしもデータがあるとは限りません。でも、紙で受注したからといって、パソコンとの役割分担をあきらめてしまう必要はないのです。

発注時にデータがないのなら、データを自分で用意すればよいだけです。

私が専門にしていた特許分野では、各国の特許庁や民間企業が特許明細書のデータを提供してくれていましたし、学術論文や書籍など原文のデータを外部から取得できる分野は結構たくさんあります。また、こうした手段を利用できないときは、自分でスキャナとOCRとを使ってデータを作成することができます。

OCRには誤認識の問題が残りますが、特に英文OCRの場合は正しく使えば識字率は90%を超えます(文字認識ソフトウェアによっては識字率98%をうたっている商品もありますが、専門用語の多い産業翻訳では90%くらいを目途にしておく方が精神衛生上よいと思います)。

つまり、誤認識があったところで全体の10%程度にすぎないわけで、これを全部直したとしても※削減できる時間と秤にかければ大きな問題にはなりません。

一般のデータベースで提供されているデータも、大半は同じように紙からOCRで作成したものです。データの正確さについてみると、無料であるか有料であるかを問わずそれほど違いはありません。

たとえば、英文特許明細書のデータソースとして翻訳者の利用頻度が最も多いと思われるesp@cenetでは、誤認識のほか段落の部分欠落やページがまるごと抜けているといったことが時々あります。これは、有料でデータを提供しているDIALOGなどのデータソースでも同じことです。

こうした変換ミスを目にしたときに、間違いに目くじらを立てて不満に思うのではなく、自分でできる作業を「代わりにやってくれた人がいる」ことに感謝し、間違いは直せばいいという気持ちの余裕を持ってみてください。

まるまる抜けているところがあれば、それは自分でタイピングして足せばよいのです。

この「気持ちのもちよう」が違うだけで、翻訳文の品質に差が出ます。嘘だと思うかもしれませんが本当です。

ネガティブな精神状態では、何をやっても良い結果を生みません。もし、不満を抱きながらでもそこそこの仕事ができている人がいるのならば、ポジティブな精神状態で作業をすれば更に良い仕事ができます。

心の状態は、いい仕事をする上では大切な要素だからです。 (つづく)

※CT方式では、実際にはほとんどの場合が誤認識を直す必要はありません。識字率で80%程度出ていれば、そのまま使えます。

BACK