最新の脳科学と翻訳

ここ数年、脳科学分野の研究は飛躍的な進歩をとげました。脳のメカニズムに沿った新しい記憶術や学習法が次々と開発され、驚くべき成果を上げています。これらの手法を世に広めた人々の名をあげれば、ゲオルギ・ロザノフ、ウィン・ウェンガー、トニー・ブザン、ポール・シーリー、コリン・ローズ、ピーター・クラインなど結構な数にのぼります。もっとシンプルなものでは、1日7分で効果が出ると言われる右脳活性化プログラムAcceleREADや、視力回復で話題のマジカルアイ、望月俊孝さんの夢を叶える宝地図なども、脳の優れた仕組みをうまく生かしている手法といえるでしょう。

こうした新時代のアプローチは、それぞれ目的によって少しずつ切り口が違うとはいえ、突き詰めてしまえば行き着くところは同じです。共通しているのは「脳」「潜在意識」「肯定的暗示」といったキーワードで、これらの手法について学ぶと何をするにも脳に適した方法とそうでない方法があることがよく分かります。

ところが、少なくとも今の日本では、潜在意識や暗示という表現を使うと怪しい宗教団体のマインドコントロールと同じではないかといった懐疑心を持つ人が少なからずいます。フォトリーディングを日本に持ち込んだ神田昌典さんが以前、日本は情報鎖国だ、アメリカは日本の15年先を進んでいると話していたことがあるのですが、これは学習や教育法にも等しく当てはまります。とにかく情報量が圧倒的に違い、いつのまにか日本だけが置き去りにされることも絶対にないとは言えないのです。

もちろん、脳のメカニズムに沿った手法が日本ではまったく知られていないわけではありません。邦訳が出版されている書籍もありますし、日本人で似たような本を出している人もいるにはいます。有名なところでは、『記憶力を強くする』や『海馬』の著者である池谷裕二氏があげられるでしょう。ただ、やはり海外との情報量の差は否めず、新しい手法を実践している人の数にも開きがあるのが現状です。

この差を少しでも小さくする上で、おそらく最も貢献できるであろう立場にいるのは翻訳者です。まず第一に、翻訳というプロセスには複数の脳科学的テクニックを活用できる余地があります。マインドマップやフォトリーディングなど、あいた時間で練習するのではなく、仕事の中に組み込んでしまうことができるのです。また、翻訳者は毎日が学習と記憶の連続です。加速学習法をはじめとする教育的側面の強いテクニックも、翻訳者にとっては強い味方でしょう。

次に、翻訳者は大量の文書を前にしても抵抗感を抱かない人が多く、新しいテクニックを身につける上で「シントピックリーディング」を応用しやすいです。シントピックリーディングというのは、同じテーマについて書かれた本を何冊かまとめて読むことで、そのテーマに関する知識を体系的に理解できるようになるというものです。

最後に、多くの翻訳者は英語を難なく読んで理解することができます。最新の情報はほとんどが英語で書かれていますので、英語を操れることは情報収集の点で圧倒的に有利です。また、場合によっては埋もれている良書を翻訳して日本に紹介するといったこともできるでしょう。

いずれにしても、このメールを読んでいる皆さん誰もが、従来とは違ったやり方を自分自身で試して人に伝えていくことができる、素晴らしい可能性を持っています。ぜひ頑張って輝かしい未来を切り開いてもらえればと思います。

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