子どもの運命は親で決まる
ポジティブ・キッズに育てる16の方法 (ISBN 4877711244)
子どもの人生を豊かにするために、主に0歳から10代後半までの子どもを持つ親/家庭向けに書かれた本です。著者のジグ・ジグラーは、全世界で150万部以上の売り上げを記録した『See You At The Top』をはじめとする心構えや行動に関する著書をいくつか出版し、全米No.1の天才講演家と評される人物です。
これだけでも親としては一読の価値がありますが、原書の邦訳に加えて、子どもへの話しかけ方、褒め方、しかり方などについて教育学者である汐見稔幸氏からのアドバイスも掲載されています。全体を通して学ぶ点の多い書ですが、子を持つ親だけでなく大人が自分自身のために読んでも役立ちます。
プロローグ
まえおき
第1章 親子で成功するための基礎をつくる方法(p.11〜15)
この本を読む上で心に留めておくとよいことが簡単に説明されています。「あなたが誰であろうと、またどこにいようとも、心の持ち方次第であなたは変われる(p.13)」こと、つまり思考が行動に直接影響を及ぼすことなどがその一例です。
第2章 ネガティブな要素を取り除く方法(p.17〜30)
会話、独り言、音楽、テレビといった日常生活に当たり前にある諸々の要素が思ってもいなかった形でネガティブな要因になり得ることや、ネガティブな世界でポジティブに考える方法が書かれています。
この章で翻訳者として興味深いのは、媒体による潜在意識への「すり込み」に関する事項でしょう。私たちは日常生活の中で目にするさまざまな媒体から予想以上に多くのすり込みを受けています。典型的な例がタバコで、喫煙者は一種のマインド・コントロールに近い状態で巧妙な罠にかけられ、タバコを手放せなくなるようです(興味のある方は関連書籍※1を参照ください)。
これと同じようなことは、ピーター・クライン著『エブリデイ・ジーニアス』の風邪薬が売れるわけ(p.166)やA.M.クラズナー著『クラズナー博士のあなたにもできるヒプノセラピー』にある暗示のパワー(p.28〜)などにも記載されています。私たちは自分でも気付かないうちに暗示を受けとり、それが潜在意識に記憶されて観念となります。
翻訳者でいえば、テレビコマーシャルはもとより、学校での授業、雑誌や本、写真などから「間違った」情報が植え付けられ、それが当たり前のものとして受け止められていく、これこそが翻訳者のスキルアップを阻む重大なすり込みといえるでしょう。
現役翻訳者あるいは翻訳者を目指す人であれば、一度は翻訳関係の雑誌やムックを読んだことがあるかと思います。では、こうした媒体に掲載される情報が現実に沿っているとは限らないことを御存知の方はどのくらいいらっしゃるでしょうか。
実は私も雑誌に記事を書くようになるまでは知らなかったのですが、実態を正確に描写すると翻訳学校や翻訳会社にとって不都合がある場合、その部分については多かれ少なかれ「美化」されて記事になります。これは、雑誌媒体は広告があってはじめて成り立つものであり、広告主となる翻訳学校や翻訳会社は出版社にとってのクライアントであることが理由です。クライアントの不利益につながる情報の公開は差し控えるというのが、継続的に広告掲載をしてもらう上で重要なことだからでしょう。
ですから、私たちが正しいと信じ込まされている情報の中には、現場のうわべだけを飾って見せているものが少なからずあるのです。世の中にあるものをすべて疑ってかかれと言うつもりはありませんが、氾濫する情報を鵜呑みにせずに自分の力で真理を見つけだしていくことが、これからの時代にはますます必要になっていくのではないかと思います。
第3章 成功の資質を身に付ける方法(p.31〜42)
第4章 ポジティブ思考を身に付ける方法(p.43〜49)
ポジティブな考え方とネガティブな考え方のもたらす影響、動機付けの意義などについて書かれています。
第5章 今から始められるポジティブな教育方法(p.53〜71)
第6章 心身のバランスの取れた子どもに育てる方法(p.77〜88)
情報処理能力、学習能力、言語能力、計算能力、問題解決能力を運動によって高められる点が、この章に書かれていることの中で翻訳者に有意な情報ではないかと思います。
話しは少し逸れますが、2004年9月18日放送のNHKスペシャル『老化に挑む』で、脳は筋肉と同じで鍛えることができ、衰えてしまった脳も鍛え直せば活性化されることが示されていました。番組では運動によって高齢者の脳がよみがえる様子をレポートしており、こうした研究結果からみても適度な運動が脳のパワーに影響していることはあきらかでしょう。
第7章 子どもにとって有意義な時間を過ごす方法(p.93〜101)
この章で最も印象的なのは、「○○ならば○○なのに」と言う代わりに「次は○○しよう」と言ってみようというくだりです。これは、かの有名なナポレオン・ヒルの成功哲学解説書『思考は現実化する』※2をはじめとして、成功者らがバイブルとあがめる書籍によく出てくるテクニックです。この「○○ならば」には、過ぎたことに対して「もし〜だったら」と否定的にとらえることはもちろん、まだ起きていないことに対して失敗したときの言い訳を考えることも含まれます。
以上、親に向けて書かれた教育書から翻訳者が自身の学びを得るヒントをいくつかあげてみました。第8章以降については目次だけあげておきますので、興味のある方はご自分で読んで活用してみてください。
第8章 家族関係を親密にする方法(p.105〜115)
第9章 家族で話し合う方法(p.119〜134)
第10章 豊かな自己像を築かせる方法(p.139〜154)
第11章 子どもにきちんと性について教える方法(p.159〜176)
第12章 性的虐待と嫌がらせから子どもを守る方法(p.181〜199)
第13章 本物の寛容を身に付ける方法(p.203〜208)
第14章 的確にしつける方法(p.213〜234)
第15章 ポジティブな粘り強さを身に付けさせる方法(p.235〜242)
第16章 本物の愛を表現する方法(p.243〜254)
エピローグ
『子どもの運命は親で決まる』に限らず、世界中で高い評価を得ている本には分野を問わず学ぶべき点が多くあります。翻訳者がスキルアップするには語学書と一義的に結びつけるのではなく、さまざまな分野の良書に触れてみるのも案外効果的だということを知っていただければと思います。
最後に、松下電器産業創業者の松下幸之助氏が残した『学ぶ心』という言葉を記して終わります。
学ぶ心
学ぶ心さえあれば、万物すべてこれわが師である。
語らぬ石、流れる雲、つまりはこの広い宇宙、
この人間の長い歴史、
どんなに小さいことにでも、
宇宙の摂理、自然の理法がひそかに
脈づいているのである。
そしてまた、人間の尊い知恵と体験が
にじんでいるのである。これらのすべてに学びたい。
※1 アレン・カー著『禁煙セラピー』
加濃正人、松崎道幸、渡辺文学 著『タバコ病辞典』
※2 多くの人にとっては難しくて読みにくい本だと思います。興味がある方は、最初は『図解 思考は現実化する』から入ると良いかもしれません。
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